東京家庭裁判所 昭和58年(少)17842号 決定 1983年11月01日
少年 N・I(昭三八・一二・一五生)
主文
少年を東京保護観察所の保護観察に付する。
理由
一 非行事実
少年は昭和五八年九月一五日午前三時四〇分ころ、杉並区○○×丁目××番××号○○マンション四階××号室A子(当時一九歳)方に、故なく、ベランダから侵入し、就寝中の同女に対し、馬乗りになり、同女が驚愕して声を出すや、所携のガムテープで口を塞ぐ暴行を加え、更に「大きな声を出すと殺すぞ」と脅迫し、同女の乳房を弄ぶ等のわいせつの行為をしたものである。
二 法令の適用
刑法一三〇条、一七六条
三 処遇の理由
本件の犯行態様は、マンションの四階のベランダから住居侵入のうえ、女性の口にガムテープを貼るなど極めて悪質なもので、少年の非行性が高いことを窺せるものであり、加えて、少年は過去に少年院送致決定を二回受け、その執行を受けているのみならず、道路交通法違反で懲役刑の執行を受けた経験があるもので、本件については当然検察官送致が相当なものである(従つて、当裁判所は、昭和五八年一〇月一九日その旨の決定をしたが、その後、告訴が取下げされ、再送致された。)が、少年が事後四六日をもつて成人を迎えることを考慮すると、成人であれば不起訴となる本件について、均衡上、少くとも一年間の身柄拘束をともなう特別少年院送致は必ずしも相当な処遇とは言えず、その効果も期待できないこと、少年及び保護者の反省が深く顕著であること、有力な社会資源が得られたことなどを総合して判断し、少年に対しては東京保護観察所の保護観察に付することとする。
よつて、少年法二四条一項一号、少年審判規則三七条一項を適用して主文のとおり決定する。
(裁判官 多田周弘)
〔参考〕送致書(乙)
少年法四五条少年審判規則第八条規程第八〇条
送致書(乙)
(罪名)住居侵入 強制わいせつ(氏名)N・I
右少年事件は貴裁判所から刑事処分を相当とするものとして送致を受けたが、左記の理由により訴追を相当でないと思料するので右事件を更に送致する。
昭和五八年一〇月二一日
東京地方検察庁
検察官検事○○○○印
東京家庭裁判所殿
理由
本件は、親告罪であるところ、当庁において一〇月二〇日に告訴人A子作成の告訴取下書を受理したので(親告罪の告訴の取消し)、被疑少年については少年院送致の処遇を相当と思料し再送致するものである。